千歳のブランドコンセプトはこう語られています。
『江戸享保元年（1716年）の創業より幕末まで造られた「千歳」。明治維新とともに姿を消したこの銘柄が百年以上の時を経て現代に蘇る。米、米麹、水。素材の全てにおいてこの土地に由来するものを選び抜き、古（いにしえ）の丹波杜氏の醸し技に範を取って造りました。当蔵が三百余年の歴史で培った「米」「水」「菌」「土」「人」が結び付き、真の地酒を生み出します。』
～山名酒造 千歳パンフレットより
このコンセプトに基づき、米は全て兵庫県産かつ兵庫県で開発・発見された品種のみ使用、種麹はひかみもやしを使い、仕込み水は蔵の井戸からくみ上げる神池寺山伏流水を使います。また現在の醸造で主流のタンクではなく、昔ながらの木桶を使い、醸造用乳酸無添加で地元の丹波杜氏が酒母を造ります。
「千歳」ブランドは、そのままの「千歳」（ルネサンスと言い分けるときは「クラッシック」と言います）と、「千歳ルネサンス」の二種類があります。「千歳ルネサンス」は、千歳のコンセプトに『Re＝再び＋Naissance＝誕生』をコンセプトに加え、江戸時代の酒造りに想いを馳せて醸しています。具体的には無農薬・無化学肥料で栽培されたお米を江戸時代の当時さながらの低精白で使用します。また造りも当時と同じく酵母無添加（もちろん乳酸も無添加）でスペック的には「ほぼ江戸」です。
当店では、この「千歳ルネサンス」シリーズについて、コンセプト・味ともに強く共感するところがあり、皆さんにお薦めしていきたいと考えております。
本品はルネサンスシリーズの第三弾として発売された無農薬・無肥料の自然栽培米・HyogoSake85＋木桶で無添加にこだわった生酛造り＋槽搾りの純米原酒です。HyogoSake85は兵庫県が10年以上の歳月をかけて開発した酒米です。新しく栽培を始めた時に兵庫県下で4つの酒蔵がその醸造を委託されました。その４つの酒蔵の一つが山名酒造です。山名酒造はその後もこの新しい酒米での醸造を続け、この米の性質を最もよく知る酒蔵と言っても良いのではないでしょうか。2021年にルネサンス山田錦の原料米を栽培されている廣岡治さんが、この米も自然栽培で栽培を始めてくれたことから2022BYより「千歳ルネサンスHyogoSake85」が誕生しました。
私が考えるHyogoSake85の特徴はスッキリとした、味の軽さとうまさがいいバランスで同居する味わいです。千歳ルネサンスシリーズが誕生する前までHyogoSake85のお酒からもその傾向が見られます。
ルネサンスシリーズは、今までの速醸で醸したものとは異なり、木桶で無添加にこだわった生酛造りなので、どの様な米の個性が引き出されるか楽しみでしたが、想像以上にスッキリした飲みやすさに仕上がっています。ルネサンスシリーズでは一番酸が優しいとも感じます。
第一弾として発売されている同じルネサンスシリーズの「山田錦」版もあります。こちらは磨いて綺麗なお酒にする代表的な米です。その米がルネサンスのコンセプトでどういうお酒になるのかというのも楽しみのポイントです。
また2022BYから第二弾としてルネサンスシリーズに加わった「野条穂」版は復活米が持つ複雑な味わいを楽しめるお酒です。これらを呑み比べるという楽しみもぜひ体験してください。
